センター長挨拶

社会科学高等研究院
EBPM研究センター長
小塩 隆士

少子高齢化の進展や産業構造の急速な変化、厳しい財政状況の下で、我が国の政策運営はますます難しくなっています。政策を取り巻く現状や政策課題を的確に把握し、限られた資源の中でできるだけ効果的な、しかも信頼性の高い政策を立案する必要性が高まっています。また、政策効果を客観的に評価し、必要であれば適切に修正する姿勢も求められています。こうした要請に応えるためには、各種統計を積極的に活用した、証拠に基づく政策立案(EBPM ; Evidence-based policy making)を推進する必要があります。

一橋大学では、社会的な要請が急速に高まっているこのEBPMに資するため、全学的な研究体制を構築しました。その中核になるのが、一橋大学社会科学高等研究院(HIAS)の下に設置された「EBPM研究センター」(HIAS EBPM)です。本センターの特徴としては、次の3つが挙げられます。

第1に、本センターのリーダーシップの下、部局横断的にEBPM研究を推進する体制を整備していることです。長期経済統計から大規模ミクロ・データに至るまで、定評のある多くのデータベースと、高度な実証・理論分析の実績のある研究スタッフが部局横断的にEBPM研究を進めています。大学の組織としても、経済学研究科や各研究科のほか、文部科学省の共同利用・共同研究拠点に指定されている経済研究所、そしてHIASの下部組織であるグローバル経済研究センターや医療政策・経済研究センターが、本センターのEBPM研究に全面的に協力しています。

第2に、EBPMを推進する人材育成に力を入れていることです。経済学研究科では、博士後期課程に「EBPMプログラム」を設置し、EBPMを推進する人材育成に積極的に取り組んでいます。同プログラムは、中央官庁等で勤務している方々を主な対象として、高度な経済分析能力を働きながら修得していただく仕組みです。本センターでは、このEBPMプログラムと連携しながら、EBPM人材育成に対する強い社会的要請に応えると同時に、研究と教育との間で好循環を形成することを目指しています。

第3に、EBPMに関して政策当局と密接に連携し、現実的な政策評価・立案を行う体制を整備していることです。本センターの構成員には中央官庁での勤務経験者が多く、また、実際の研究活動においても中央官庁や日本銀行等が行う調査・研究に参加しているケースが少なくありません。本センターでは、そうした研究活動を統括するとともに、現実の政策課題をリアルタイムで把握し、我が国のEBPM推進に貢献することに務めています。